中医学では、花粉症という疾患名はありません。空気中に飛散している花粉やそれに類する飛散物を誘発素因として、鼻づまりや鼻水、喘息、発熱、五官の疾患を引き起こす症状です。誘発素因を治療対象として考えるのではなく、体質を考えて治療していきます。
カゼ引きの繰り返しやその他の慢性疾患により肺気を損傷している方に起こる。肺気の不足からその治節機能が低下して清陽が昇らず、濁陰が降りないために濁陰が鼻竅に停滞すると鼻淵になる。誘発素因に対し、肺気がおかされやすいために発生します。時には寒気によっても、同様の症状となります。
飲食不摂生や過労、過度の思慮などにより脾胃を損傷すると気血生成が不足し、清陽が頭面部に昇らず、鼻が気血の栄養を充分に受けられなくなる。さらに脾気虚弱のため運化機能の失調から湿濁を生じて、その湿濁が経絡に沿って鼻竅に集まると鼻淵引き起こしやすい状態となります。そこに誘発素因による刺激があると鼻汁が止まらない花粉症となります。
ストレスなどの精神刺激により肝気鬱結に陥り、この肝鬱が熱に変化することがある。また表裏関係にある胆経の経気は脳に通じ、その支絡は鼻傍に至るので、誘発素因の刺激を受けて肝胆の鬱熱が経絡に沿って脳を犯し、鼻に影響すると鼻淵になる。また、肝は目に開竅しますので目の乾燥や痒みなどの疾患も生まれやすい。
熱による乾燥やタバコなどにより肺に熱がこもっているときにおこる。本来は肺の宣発作用によって体内の熱を発散させるが、宣発作用の低下により熱が上に昇り、鼻閉や前頭葉の脹痛を引き起こす。ここに誘発素因の刺激が加わると熱がより鬱結します。